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「わたしたちは、言葉を伝えたいわけじゃない。言葉では遅すぎる。言葉では不自由すぎるのよ。だから、言葉だけでは伝わらないことを、表現しきれないことを、一つの物語に編んで届けることしかできない。それがきちんと届いて、正確に伝わるかどうかなんて、きっとわからないことなのだわ。それでも、自分だけは確たる信念を持って物語を綴らなければならない。」

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」が2020年本屋大賞にノミネートされ、6位にとなった相沢沙呼先生。

今回の「小説の神様」も5月の映画化が発表されており公開直前ということで、書店で名前を見ることが多くなり今注目の作家といえます。

そこで、ぼくが2冊目に読む相沢先生の作品として「小説の神様」を手に取りました

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」では、ラストの巧みなどんでん返し驚愕させられましたが、「小説の神様」は全く違った魅力がある作品でした!

映画の情報とともに、原作小説のあらすじと感想を、ネタバレなしでお伝えします!

この本はこんな人にオススメ!

  • 夢を諦めた人
  • 仕事で文章を綴ることがある人
  • 最初は弱くて脆い主人公が、傷ついたヒロインを助ける物語が好きな人

こんな人は絶対おすすめなので、ぜひ読んでください!

小説の神様 君としか描けない物語

映画「小説の神様 君としか描けない物語」千谷一也役にEXILE /FANTASTICSの佐藤大樹さん、小余綾詩凪役に橋本環奈さんW主演で、5月22日(金)公開予定です。

その他のキャストに、佐藤流司さん、柴田杏花さん、莉子さん、片岡愛之助さんの名前が連なっています!

この本のあらすじ

中学生覆面作家「千谷一夜」としてデビューした千谷一也。しかし、デビュー以来いくつか作品を発表するも、売り上げが振るわず、ネットの口コミでは酷評される現実に直面してしまいます。

小説を書く目的を見失ってしまい、自分の小説を愛せなくなってしまっていた時、人気高校生作家「不動詩凪」として活躍する小余綾詩凪との合作の話が舞い込んできます。

小余綾がストーリーを考え、それを一也が文章にするというものでした。

「小説には人の心を動かす力がある。人に希望を与えることだってできる。」と語る小余綾に対し一也は「小説に力などあるものか」「お金のために売れ筋の物語にするべき」と反発します。

「人は夢や志だけでは生きてはいけない」と……。

しかし、小余綾のある秘密を知ることで、失いかけていた物語を綴る意味を取り戻し、小余綾との共同作品の完成に向けて一歩踏み出します。

主な登場人物

千谷一也

「僕はずっとこのままだ。なにもない薄っぺらの、空白な人間なのだ。そんな人間から、いったい何が生まれるっていうのだろう」

自分の作品に対する酷評と、父が残した借金と病気の妹の治療費のためにお金を稼がなくてはならない現実に苦悩して、小説に夢を見ることを忘れ、自分を卑下してしまっている高校生作家。

小余綾詩凪

「物語を読むことで、心に湧き上がる力があるのなら。それを用いて、現実に立ち向かってほしい。苦しいことも、辛いことも、物語があるのなら、人は必ず立ち向かえるから」

人気高校生作家で、一也たちの通う高校に転入してきます。

容姿端麗、頭脳明晰で運動神経も高く、美しい立ち居振る舞いと言葉使いをしますが、その言動は勝気で辛辣。

実はある悩みを抱えています。

九ノ里正樹

「俺はお前が屑だとは思わない。退屈だとも、空っぽだとも、日陰だとも思わない。お前は凄い奴だよ、一也。お前は、それを当たり前のようにできるから、気づけないんだろう。けれどお前は、俺たちでは決してできないことが、できてしまえる人間なんだ」

文芸部の部長で一也の友人で、小説ならオールジャンルで読む読書家。

打ち拉がれる一也を、読者目線で見守っています。

あぁ、僕にもこんな風に励まし、くじけそうな時に立ち直らせてくれる友人がいたらなぁ。

成瀬秋乃

「誰の中にも、物語があると思うんです。だから、どんな人でも、物語の主人公になれるって……。そうであってほしいって……。わたしはそう思っていて……」

小説家志望の一年生。

一也に小説の書き方を教えてほしいと頼み、文芸部に入部します。

しかし、小説が好きなことを友達に打ち明けられずにいて、自信が持てずにいます。

千谷雛子

「お兄ちゃんの本が、どーんって本屋さんに並んでいるところ、いつか見てみたいなぁ」

一也の妹で、病気で入院中です。

一也に頼んで本を買ってきてもらう読書好きで、不動詩凪の大ファンです。

兄のことも健気に応援しています。

河埜さん

「わたしは、千谷くんと一緒に、いつまでも読者の胸に残るような物語を作りたい。千谷くんとなら、それができると思ってる。たとえ今が駄目でも、次があるじゃない」

一也と小余綾を繋いだ担当編集者であり、作家千谷一夜の理解者。

感想

なぜ小説を書くのか?  何を伝えたくて物語を編むのか?

相沢沙呼先生の、小説家という職業、若しくは文章を綴る行為そのものに対しての思いをまっすぐに込めたような小説です。

ぼくは、小説家や漫画家、画家、ミュージシャンなど人の心を揺さぶる力を持ったものを創作する人達を心から尊敬しています。

しかしそれらの人々が、現実的にビジネスとして成り立たせるには乗り越えるべき高い3つの壁があります。

お金を稼ぐことができるか、自分や家族が食べていけるかどうかという数字の壁。

売り上げや見込みという数字の壁。

そして、その2つの数字の壁を乗り越えられなかった人たちから嫉妬や妬みからくる誹謗や中傷といった声。

より多くの人がこの壁を乗り越えてほしい。 自分が伝えたいと思ったことを自分なりの表現方法で伝えてほしい。

そんな相沢先生のメッセージが込められていると感じました。

千谷一也の苦悩

発表する小説の売れ行きが振るわず、ネットの口コミで酷評され、一也が苦悩しつずける様子が描かれています。

担当編集者も、「千谷さんのデビュー作は時代に合っているとは言いがたい内容なんです」「明るくて、心がホッとするような、そういう売れ筋の物語を書いてみましょうよ」と言って、味方にはなってくれません。

自分が良いと思っているものが、他人に受け入れてもらえない。

自分が書くものは屑だ。ゴミだ。 そういったものしか生み出せない自分は空っぽだ。 と自己否定を繰り返し、執筆の手が止まってしまいます。

でも、読み進めていくと一つの疑問が浮かんできます。

千谷一夜のデビュー作に大御所の作家が、中学生というプロフィールを知らずに評価しているんです。

「文体は、研ぎ澄まされた日本刀のように、読み手の心へ深く切り込んでくる。それでいて刃はひどく繊細で、叩けば折れてしまいそうなほどの、危うくも流麗な美しさなのだ」

それ以外にも、親友の九ノ里や小余綾も面白いと言い、編集者の河埜もファンだといい、一年生の成瀬は文芸部の部誌に掲載していた千谷の文章に憧れを持って文芸部に入部してきます。

そもそも中学生で、本を出版できること自体がものすごいことだと思います。

そんな誇らしく、自信を持って良い才能を発揮しているのに、千谷は延々とうじうじウジウジ……

あなたもこういう感覚って経験ありませんか?

評価や賛同といった周囲の人からのポジティブな声は嬉しく思い、勇気付けられます。

でも、批判や誹謗、中傷などのネガティブな声のパワーは絶大なんです。

ましてや、売り上げや成績といった数字や理屈で明確に示されると口籠ることしかできなくなってしまいます。

この強力な負の力に支配されてしまうと、人は時として、ポジティブな声は聞こえなくなり、夢や希望が見えなくなってしまいます。

ぼく達は、負の力にとても弱くて脆い生き物なのです。

だからこそ、自分の胸の奥底に静かに潜む夢、希望、志、情熱に意識的に耳を傾け、自分が本当にやりたいことはなんなのか、人生において何を成し遂げたいのかをしっかりと見据えなければなりません。

あなたの本当にやりたいことはなんですか?

夢や希望は見えていますか?

そんな相沢先生からのメッセージだと、ぼくは思います。

売れる小説って?

千谷は、後輩の成瀬に売れ筋に沿った内容の小説を書くべきだとアドバイスします。

「みんなが求めているのは、カッコ良かったり美人で、頭脳が明晰で熱意と勇気があって、人間くさい欠点がオマケ程度にあるような……。そういう、実際にはありえないような人物像だ。本当の人間なんて書いたら、読者から非難囂々だよ。」

「ファンタジーにするなら、やはり異世界転生ものにするべきだ。タイトルには異世界転生というキーワードを加え、チートとも付けよう。もちろん主人公は無双キャラで唯一無二のキャンセル能力持ちだ!  これは売れる!」

と、売れ筋のプロットを語ります。

確かにキーワードは大切で、最近のラノベの流行は「異世界転生もの」ですし、今流行っているものを再現すれば、手に取ってくれる人は増えるでしょう。

しかし、ぼくはこの考え方に否定的です。

ぼくは、書店でラノベの書棚を見たときに、驚きと悲壮感に似た感情を抱いたことがあります。

非常に多くの本が並んでいるのですが、その大半のタイトルに異世界転生、異世界転生、異世界転生……

同じようなタイトルの本が量産されていて、同じような書影の作品がズラッと並べられた書棚。

その光景は、ぼくの価値観とは一致しませんでした。

ぼくが小説や漫画などの物語に求めているものは、自分とは違う考え方や経験に触れて新しい発見ができること。 そして自分の考え方や価値観を揺るがすような発見があることです。

その作家にしか書けない、作者の伝えたいメッセージが込められた作品に感動し、登場人物と一緒に喜び、ときに悲しみ、そこに価値を感じるのです。

だから、一也のいう「売れ筋に沿った内容」の作品に価値を感じません。

オリジナリティが欠けていると感じてしまいます。

これは、小説に限った話ではないと思います。

例えば仕事で言えば、プレゼンテーションや、企画書などから、プライベートなメールやSNS、このブログに関しも同じだと思います。

書いた人の溢れる思いが込められており、伝えたいメッセージが読み手の心に突き刺さるからこそ、文章は人の心を動かす力を帯びるのではないでしょうか?

この価値観を、ぼくは大切に考えています。

心に響いた一節

「わたしは、自分が泣かないために本を読んでいる。誰かが泣かないために、小説を書いている。これからの自分と、わたしの物語をどこかで読んでくれた誰かが、もう悲しい思いで泣かないでいいように……。そう願いを託しながら、小説を書いているの」

小余綾の小説に込められた思いを表した一節です。

「小説の神様」を読んだ人は、心に残るんじゃないかなと思ったので、抜粋しました!

まとめ

小説という題材で、作者の相沢先生の思いやメッセージがふんだんに盛り込まれた作品「小説の神様」

文章もすごくエモいんです。

5月に公開予定の映画と、続編の「小説の神様 あなたを読む物語」も楽しみです!

ぜひ読んでみてくださいね!

執筆者

前田ヒロシ

大阪府出身。追手門学院大学文学部卒。webライター。自身の悩みを解決するために哲学、心理学の本を読むうちに、得た知識を使って、夢や希望を持って働く人に貢献したい!  と思うようになり、副業としてブログサイトInterview with Dreamer」を開設。飲食店のブログページ運営のサポート業も手掛ける。趣味は、読書、映画、アニメ、ぬか漬け。読書メーター始めました!

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