ミヒャエル・エンデ作の児童文学、「モモ」のあらすじと感想、作中の名言などを紹介します!
ミヒャエル・エンデさんは、彼の著作「はてしない物語」翻訳者佐藤真理子さんと結婚しており、日本にもゆかりのあるドイツ人作家です。
そしてこの「モモ」は、ファンタジーでありながら、サスペンスのようなスリルもあり、さらには社会風刺も盛り込まれた読み応え抜群の小説で、とても面白い作品です!
ぜひあなたにも読んで欲しいので、なるべく物語の結末まではわからないように、キーポイントだけに絞って解説します!
Contents
この本を読もうと思ったきっかけ

以前「星の王子さま」を読んで、児童文学の良さに気がつきました。
「星の王子さま」を読み終えた時、大人になって忘れてしまった大切な気持ちを思い出させてくれるような、それでいて今まで思っていた価値観を足元からひっくり返されるような衝撃を覚えました。
児童向けと侮るべからず。
昔から読み継がれる名作には、哲学にも似た人生をよりよく生きていくために大切な教訓が詰まっていました。
そしてまた名著を探していて、このミヒャエル・エンデの「モモ」に出会いました。
「星の王子さま」で語られていたテーマは「本当に大切なことは目には見えない」という事と、「何かに費やした時間が、それをかけがえのないものにする」という事でした。
「星の王子さま」についてはこちら!
そして、「モモ」のテーマは時間とは何か。
このテーマに興味をそそられ、思わず手にとって、読み始めました。
この本のあらすじ

町外れの円形劇場跡に突然現れた不思議な少女モモ。
街の人々は、彼女に話を聞いてもらうだけで問題が解決したり、ケンカしていた相手と仲直りできたり、幸せな気持ちになれました。
そうして、街の人々にとってモモはかけがえのない存在になっていました。
そんなある時、時間貯蓄銀行のエージェントと名乗る不気味な灰色の男たちが、街の人々に時間を節約するように説得して回っていました。
そして、人々は何でもセカセカと効率を重視するようになり、ずっとイライラした様子に変わっていきました。
そして灰色の男たちは、みんなが節約した時間を盗む「時間どろぼう」だったのです!
そんな変化に気づいたモモは、街のみんなを救うため、灰色の男たちに立ち向かいます。
感想

ミヒャエル・エンデのあとがきにこのような一文があります。
「わたしはいまの話を、過去におこったことのように話しましたね。でもそれを将来起こることとしてお話ししてもよかったんですよ。どちらでもそう大きなちがいはありません。」
正直、ゾクッとしました。
作中の、灰色の男たちに操られてセカセカと機械的に日々を暮らす人々の描写が、物語の中だけでなく、ぼくたちの今の現実世界でも感じられると思ったからです。
あなたも「時間がない」といって、人に冷たく当たってしまったことがあるのではでしょうか?
先を急ぐあまりに、困っている人を見て見ぬふりをしたことがあるのでは?
効率的な行動を求められることが多く思いますが、いったい何のために急ぐのかを見失ってしまってはいませんか?
家族や友人、恋人と語らい、ともに喜び、ともに悲しみ、ともに過ごす時間を楽しむことの方が重要なことだと思います。
好きな登場人物とその理由
道路掃除夫ベッポは、無口で思慮深いおじいさんです。
彼は序盤で、物語のテーマに関わる重要なことをモモに話しています。
「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」
「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。ときどき目をあげてみるんだが、いつ見てももこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。道路はまだのこっているのにな。こういうやり方は、いかんのだ。」
「つぎの一歩のことだけ、つぎの一呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。」
「するとたのしくなってくる。たのしければ、仕事がうまくはかどる。」
「ひょっと気づいたときには、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。どうやってやりとげたかは、じぶんでもわからんし、息もきれていない。」
この話はかなり序盤の、まだストーリーが始まっていないときに出てきますので、ぜひ覚えておいてください。
ベッポの働き方は、非効率でものすごく遅い仕事の仕方だと思います。
その分、誰よりも考えが深く、何より仕事への愛情を持って、人生を楽しんでいるのでしょう。
共感した部分
実は、冒頭のモモの登場シーンでぼくは涙が溢れ出てしまいました。
施設から逃げ出してきたというモモは、モジャモジャ頭にブカブカの男ものの上衣、裸足で真っ黒な足をした決して清潔と言えそうもない格好をしています。
そんなモモを町の人たちは、あれこれとやりとりをした後、モモがここに住みたいという円形劇場跡に居ることを認めて、みんなで住めるように掃除したり、食べ物を持ってきたりします。
町の人みんなでモモを見守ることに決めたのです。
こんな町の人たちの優しさに心打たれてしまいました。
現実ではありえないことではあると思いますが、この心の美しさだけは失ってはいけないと思います。
心に残ったシーン
灰色の男たちが町の人たちをことば巧みに操っていくシーンは、怖いというか、気味の悪さを感じてしまいます。
特に、モモが町を離れていた一年の間のベッポやジジ、そしてモモと仲良くしていた子供達にまで迫った灰色の男たちの策略の様子は、何とも言えない気味の悪さが漂います。
別にホラーというわけじゃないんですけど……
本当に「何とも言えない気味の悪さ」という表現が一番ふさわしいと思います。
心に響いた名言とその理由

時間の国にやってきたモモは、時間を司る人、マイスターホラに「時間とは何か」ということを教えられます。
この会話がかなり重要な部分で、心に留めておきたくなる名言が含まれています。
「人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんできめなくてはならないからだよ。だから時間をぬすまれないように守ることだって、じぶんでやらなくてはいけない。」
「光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じ取らないようなときには、その時間はないもおなじだ。」
自分に与えられた時間の使い方は自分で決める。そしてその決め方は、自分の心で感じ取る。
「時間がない」というのは勘違いで、時間はあるけど、自分で決めた人間として有意義な時間が少ないときに「時間がない」と思ってしまうのではないでしょうか?
まとめ

この本をどんな人に読んで欲しい?
仕事で能率ばかりを求められ、仕事を好きになれないような悩みを感じたときに読むと、ヒントを得ることができるのではと思います。
今やっている仕事を考え直し、好きになろうとする。もしくは、自分がやりたいと思うことに再挑戦する。
どちらでも、決めることができるのは自分しかいません。
他の誰にもあなたの時間を奪われてはいけないのです。
この次に読みたいこの作者の別の作品は?
ミヒャエル・エンデについて調べることで初めて知ったのですが、あの有名な映画「ネバーエンディングストーリー」の原作は、彼の著作「はてしない物語」でした。
子供の頃、「ネバーエンディングストーリー」が大好きだったので、ぜひこの「はてしない物語」を読みたいと思います!
執筆者

前田ヒロシ
大阪府出身。追手門学院大学文学部卒。webライター。自身の悩みを解決するために哲学、心理学の本を読むうちに、得た知識を使って、夢や希望を持って働く人に貢献したい! と思うようになり、副業としてブログサイト「Interview with Dreamer」を開設。飲食店のブログページ運営のサポート業も手掛ける。趣味は、読書、映画、アニメ、ぬか漬け。