スポンサーリンク



川村元気さんのご著書「百花」を読みましたので、感想を書きます!

繊細で美しい、そして辛くも暖かい、とても素晴らしい作品ですので、オススメです。


百花

この本を読もうと思ったきっかけ

私は、本屋さんや図書館に行くのがとても好きです。

都会のビルのようにきれいに区画整理され道を形成している本棚。

そこに並べられた「知識」の象徴ともいえる無数の

その知識の街を自分の興味や関心に任せて足を進めていき、足を止めて本を手に取り、また次へ。

こうして店内をグルグル巡っていると、「あっ、今こんなことに興味があるんだ」「今この知識が足りないと思っているな」と自分の感性と会話しているような感覚になります。

まるで、自分の心を調律するように。

そしてある日、いつもはビジネス書や心理学、時事といったジャンルの本を手に取ることが多い私なのに、なぜか小説の本棚で足を止めていました。

理由はわかりません。ただ興味があったのでしょう。

そうして出会ったのが川村元気さんの「億男」。

普段小説を読まないので川村元気さんが、「電車男」「モテキ」「君の名は。」といった大ヒット映画の原作者だったことは全く知りませんでした。

そしてこの「百花」は、私が手にとった川村元気さんの2冊目です。

この本のあらすじ

現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。

全てを忘れていく母が、思い出させてくれたものとは何か。

引用:文藝春秋 百花 川村元気著 背表紙帯より

この作品のあらすじとして、とても秀逸でしたので引用しました。

母子家庭で育ち、レコード会社に勤務している葛西泉。

泉を産んでからは、人生のほとんどを息子のために費やしてきた母の百合子。

一見仲の良い親子のように見える二人ですが、どことなく距離感が感じられます。

それは二人には、まるで映画製作の過程でカットしたかのような「空白の1年」があるためです。

そして百合子は認知症になってしまい、徐々に奇行が目立つようになってしまいます。

子供のようになっていく母の介護の傍、泉は記憶から閉ざしていた「空白の1年」のことを思い出し、母への愛情を新たに思い起こします。

感想

この物語は、人によっては読み進めていくと心が締め付けられるような感覚になるのではないのかなと思います。

認知症になり、徐々に普通の会話もできなくなっていく母。

それに対して、辛辣な言葉を投げかけてしまうこともあったり、子供が産まれる直前でもあることから、介護サービスや施設を検討せざるおえず、どこか後ろめたい気持ち。

そんなマイナスの感情が、読み手の心にどんどん入ってる感覚があります。

なぜなら、主人公の泉が登場人物の中で一番平凡な人柄であるからだと思います。

天才でもなければ、凄腕のビジネスマンでもなく、人間的にすごく魅力的なわけでもない。

泉がとりたてて特徴がなく、どこにでもいそうな人物像なので、スッと感情移入できてしまう。

泉が見るもの、聴くものが、自分のことのように感じることができる。

ですので、辛く悲しいストーリーではあっても、素晴らしい作品だと思います。

共感した部分

認知症の症状が見えるシーンには心をえぐられるような気持ちがしてしまいます。

突然どこかに行ってしまって必死に探し回るシーン、味噌汁を作ったと行って、千切ったチラシが入った鍋をお玉でかき回すシーン。

しかしこれら辛い部分とは裏腹に、泉が思い出す小学生や中学生時代の優しい母の姿や言葉は、本当に暖かく感じます。

そしてラストの「半分の花火」の回想で、泉の母への愛情をはっきりと読むことができます。

心に残ったシーン

例えば、自分の記憶や感情、自我など「心」をデータ化して、老いたり、病気に侵された体を捨てて人工的に作られた体に移植できれば、その人は生きていると言えるとしたら、その逆に体は機能していても、記憶、感情、自我が失われた時は生きていると言えるのでしょうか?

物語の途中にそのような話題が出てきます。

そして物語後半のなぎさホームでのピアノ演奏会。

泉の名前すら忘れた百合子は、最初はうまく弾けないものの、途中から滑らかな演奏に変わっていきます。

そのピアノを弾いている間だけ、たとえ全てを忘れてしまったとしても、確かにそこに百合子は居る。

泉の記憶する優しい母はいるのだと思い、心に響きました。

まとめ

この本をどんな人に読んで欲しい?

どんな人も、大切な人を思い浮かべながら読んで欲しいのですが、とりあえず息子さんにオススメしてみてはいかがでしょうか?

きっと母親の大切さに気づくと思います。

この本での気づきや学び

失うことで、初めてわかることや、思い出すことがある。

この本を読むとほんとうにこの言葉の深さを感じることができます

この次に読みたいこの作者の別の作品は?

川村元気さんの作品は映像化されることが多いのですが、著書を読むと、映像とはまた違った魅力があります。

美しい情景描写、フォントの使い方、漢字とひらがなの割合の変え方など、文章としての表現力が素晴らしいと言えます。

次は、「世界から猫が消えたなら」「四月になれば彼女は」を読んで見ます。


百花

今後のイベント

今後のイベントはありません